衛星画像から見る土砂災害範囲[西日本豪雨 愛媛県]

衛星画像から見る土砂災害範囲[西日本豪雨 愛媛県]

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西日本豪雨について

2018年6月28日から7月8日にかけて西日本を中心に広範囲で記録された集中豪雨です。我々が写真データ等を取得している愛媛県も被害を受けており、大洲や宇和島を主として多くの洪水、土砂災害が発生しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出展


Sentinel-2について

今回の天災被害は広範囲に及んでおり、これを抽出するのに衛星画像が有用と考え、定期観測を実施している衛星画像を取得し、被害範囲の抽出を試みてみました。

取得したのはヨーロッパの光学衛星Sentinel-2です。Sentinel-2は10日間周期の太陽同期軌道にあり、日本の観測画像も定期的に取得されています。空間分解能は10 mとなっており、2機体制で運用されているため、Landsat8より高分解能な画像を高頻度に撮像することが可能とされています。

今回は6月13日と7月13日の画像を比較します。6月末と7初頭は雨天が続いていたため陸域はほとんど確認できなかったため、前後で少し間が開いています。Sentinel-2画像のESA : European Space Agencyのサイト(https://sentinel.esa.int/web/sentinel/missions/sentinel-2)のオープンアクセスハブから入手できます。当サイトでは入手した画像に対して大気補正、閲覧ソフトによるストレッチ表示補正処理を施しています。

 


衛星画像で見た豪雨前後の状況

取得した画像を見てみます。まず、Sentinel-2の各バンドを合成してRGBカラーで表現したコンポジット画像です。確認範囲は報道でも多く取り上げられている宇和島市吉田町の土砂災害箇所をピックしています。

 

上記画像から、土砂災害が発生したと思われる範囲は土砂の色がよく見えることから容易に推定できます。被災前後の比較で主として見るのは植生の喪失の有無と言えます。そこで、植生を数値的に示すNDVIの差分を前後画像で取得し、差分値が大きい箇所を強調することで、土砂災害推定発生箇所を作成します。

左二つの画像がNDVI値が低い方から赤、黄、青色でストレッチ配色した画像です。6月の段階でNDVI値が高い箇所が7月になると極端に低くなっていることが分かります。そして、2画像間の差分を算出し、差分値0.3以上をマーキングして重ね合わせたのが右端の画像になります。7月画像で確認できた崩落個所が橙色で表示されているのが分かります。なお、右上の広域範囲は雲によるものです。

災害後(7月13日)と災害前(6月13日)のNDVI画像の差分を取ると、その変化が大きく捉えられました。今回の災害によって、山間部で土砂崩れが発生すると、植生も地表からなくなることから、土砂災害が発生した箇所が容易に発見できることがわかります。雲もNDVI画像上では値が小さくなるため、その変化が強調されます。


野村ダム近辺の土砂災害推定箇所

次に水域の付近のサンプルとして西予市野村町の野村ダム付近を見てみます。ダム内には流出したゴミが浮いているのが分かります。近辺の山間部にも植生が喪失している推定崩落個所が見られます。以下、幾つか範囲内からピックアップした箇所の画像を羅列しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


松山市の土砂災害推定箇所

松山市も同様に見ていくと河川付近と山間部に変化が見られます。ダムから河川にかけては水の汚濁が確認でき、増水があったことが窺えます。崩落は左上の興居島と向かいの高浜で多く確認することができます。興居島は島の面積から考えると密集しているように見えます。以下、ピックした範囲の画像を羅列します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


今回の災害は、かなり広範囲な地域に深刻な被害を与えました。被害状況把握のため、迅速なデータ収集が望まれます。この豪雨の後、人のアクセスが困難な山間部や離島でも多数の崩落が確認されました。衛星による広域観測を実施することで、山間部に発生した河道閉塞(天然ダム)を発見し、決壊による二次被害を防止するための計画立案などにつなげることができると期待できます。

さらに崩落個所と思われる場所と道路などのデータを重ね合わせることで、交通機関への影響評価にも利用ができると思います。今度の記事では道路情報と崩落個所を重ね合わせて影響度の評価をしてみたいと思います。

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